小説予備校メルマガは、『8分間ください。あなたの心を温めます。』を出してから、順調に登録者数が増えてきています。ありがたいかぎりです。
とはいっても、
「メルマガでどんなことが書かれているのかがわからないと、購読する気になれない」
という意見もいただくので、今回は「小説予備校メルマガ 4月12日号」に掲載した文章をお届けします。
「読者デビュープロジェクト」というもので、送っていただいた原稿に対して私が感想をアドバイスを書いています。
(実際に掲載した原稿は、ここでは削りました)
このように、メルマガ登録者の方のアイデアやプロットに寸評をしてもいますので、もしも気になる方がいましたら、ぜひご登録くださいませ。
毎月980円ですが、ただ今、初月無料です!
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4:読者デビュープロジェクト2 【8分後に温かい涙が流れる小説】
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<コーナーの内容紹介>
なぜ「8分」で読める小説にしたのかというと、理由はおもに2つあります。
1つめ。
少し前に「5分後に意外な結末シリーズ」などの「5分間で読める短編集」が流行りました。
おもに学校で行われる「朝の読書タイム」で読まれていたそうですが、学生だけでなく、もう少し大人の層にも読まれたのです。
こちらのプロジェクトの企画は、そこで5分間シリーズにハマった人や、時間がないけど本を読みたい人に向けて、もう少しだけ長い読み物を提供するもの。
なので「8分間」なのです。
ちなみに、私たちの読書スピードは、おおよそ600~700文字なので、8分間で読める文字数はだいたい5000文字くらい。
こういった理由で、3000~5000文字とさせていただきました。
2つめ。
小説は、一度書き出したら、最後までとにかく書き切ることが大切です。
途中で書くのをやめてしまうと、やめグセもついてしまいますし、いいことはありません。
けれど、長編小説を最後まで書き切るのは難しい。そこで、かなり短めに文字数を設定しました。
最大5000文字であれば、最後まで書き切れない可能性は少なめ。
もちろん、5000文字には短いなりの難しさはありますが、それでも「最後まで書く」という一点においてのハードルは低いといえます。
以上の理由から、8分間(5000文字)にしました。
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募集概要
●テーマ「読後、温かい涙が流れる小説」
●文字数「3000~5000文字以内」
●締め切り「第一次締め切り:3月31日 第二次締め切り:4月28日」
●応募は週に2作まで
原稿はtete@160.co.jpに送ってください(その際、件名は【プロジェクト2】)。
お送りいただいた原稿はすべて、「収録候補作」とさせていただきます。
感想やアドバイスに関しては、全ての作品ではありませんが、メルマガ上で行う予定です。
ただし、そのアドバイスを受けて修正した作品の再応募はNGとします。どんどん新しい作品を書いていただいたほうが、いい作品が書けると思いますので。
本への収録が決まった作品のみ、個別でやり取りをしてブラッシュアップさせていただきます。
▼▼注意点▼▼
・すべての作品を拝読しますが、そのすべてをメルマガ上で取り上げるわけではありません。ご了承ください。
・原稿は、URLではなく、ワードやテキストなどのデータでお送りください。
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タイトル ******
ペンネーム *****
(実際に掲載した原稿は削りました)
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【てて160より】
ありがとうございます。
自殺をした父が、息子のために「あるもの」を残していた。それを知ったことで父に対して抱いていた後悔がなくなった、という物語。
すこしミステリーっぽさもあったりして、いいですね。
投稿者さんは、比喩表現が上手ですね。連城三紀彦っぽいというか。
「声を失ったカナリアのように」
「墨汁の湖のように」
などなど。
ただ、比喩は入れすぎるとどこまででも入れたくなってしまうので、その点は注意しつつ、オリジナルな比喩を探していってください。
また、ラストで秀美の長靴に書いている文字が父の筆跡だった場面は、温かい涙が流れそうになる素敵なシーンでした。
さて。
父の自殺の真相とか、エイズのいじめとか、隠し子とか、試験管ベイビーとか、ミステリー要素が盛りだくさんになっています。
これはこれで中編や長編小説ならいいのですが、5000文字以内の短編では盛り込みすぎかもしれません。
あれもこれもと詰め込むと、どれも中途半端にしか描くことができず、読者としては消化不良になってしまいます。それは作者として本意ではないはず。それにもったいない。
ほかにもたとえば、父の死因は自殺と書いていますが、余命宣告も受けていたりして、どういうことなのか、読者の混乱の元となっています。
これくらいの文字数の短編なら、テーマは一つに絞って、そこをしっかりと描いてみてください。
おそらく、「いろんな愛の形がある」というのが、投稿者さんが最も描きたいことなのではないかと思います。
だとしたら、父が根も葉もないうわさで自殺したというのなどは、あまり必要ない気がしますが、いかがでしょうか。
要素をたくさん入れないで短編を書くには、一番伝えたいこと・書きたいことを決めて、そこから逆算して考える、というやり方があります。
たとえば、秀美の長靴の文字が父の筆跡だった場面を最も描きたかったとしたら、そこをゴールにして、逆算してエピソードを考えてみてください。
すると、不要なエピソードと必要なエピソードが確認できます。
要素が盛りだくさんというのは、そのエピソードがゴールにつながっていない、もしくは細くしかつながっていないから、そう感じてしまうわけです。
それを防ぐには、一番描きたいクライマックス(ゴール)から逆算して、エピソードを考えるのがベストです。
あと、冒頭は「僕」なのに、途中で「秀平は」となっていて人称が乱れていたり、それとちょっと誤字も気になったので、そのあたりの見直しはしっかりやるといいと思います。
公募にしても、サイトに投稿するにしても、誤字が多いというだけで、読者は離脱してしまいますので。
投稿者さんは、表現はかなりレベル高いので、ストーリーに力を入れれば、もっともっとおもしろい小説が書けるはずです。
引き続き投稿してきてください!
期待してます!
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タイトル:*****
ペンネーム:****
(実際に掲載した原稿は、ここでは削りました)
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【てて160より】
ありがとうございます。
分かり合えなかった父娘が、父の死をきっかけにその誤解が解けるという物語。親子もの、大好きです!
こういう話は、どうやってその誤解が解けて、分かり合えるのかを描くのがすごく難しいものですよね。
そこでいかに読者の心をつかみ、感情を揺さぶることができるかで、読後感の後味が全然変わってきますし。
投稿者さんは、「主人公が昔、授業で作って父にプレゼントしたイラスト入りの茶碗」をアイテムにしています。素晴らしいと思います。
さらにいうと、「イラスト」というのが、主人公が家を飛び出した理由と関係しているのも大事な点ですね。
また、冒頭の入り方もいいと思います。この数文で主人公にまつわる事情が把握できますし、その後を読んでみようという気にもなります。
全体を読んで、物語を書き慣れている印象を受けました。テンポ感もありましたし。
あと、屋根の上でのやり取りも、読んでいてイメージがわきましたし、すごくいいですね。
物語でこういう「場所」を用意すると、物語が停滞することなく、テンポよく展開させやすくなりますね。
この小説は全体的に高得点なのですが、惜しい点がひとつ。
「父の葬式」を描いていることです。
お気づきのとおり、今回取り上げたのは2作品とも「父の葬式」が描かれています。
「読後、温かい涙が流れる」というテーマなので、きっと「家族」と「死」が思い浮かんだのだと思います。
ただ、すぐにパッと思いつくことは、多くの人が同様に思いつくんですよね。
こういったコンテストものの場合、たとえば「父の葬式」を描いたものを何作も本に収録することはありません。
となると、90点と88点だったら、90点のみを収録することになります。88点だって決して悪くないのですが、そういうものなんです。
仮に、男同士の友情を描いた80点の原稿があったとした場合、88点の「父の葬式」ではなく、80点の「男同士の友情」を収録します。
この場合、90点と88点は比較しますが、88点と80点は比較しません。
これは、いろんなコンテストでも当てはまります。
たとえば、上位2組をミュージシャンとしてプロデビューさせるコンテストがあって、10組が出たとします。
そのうち8組が男だけのバンドで、2組が女子だけのガールズバンドだったらどうでしょうか?
男バンドは、最低でも8組の中で競って上位2組に入らなければ、デビューできないでしょう。
でも、ガールズバンドは2組で競って勝てばいい。
もちろん確率の問題でしかありませんが、ガールズバンドのほうがデビューしやすいはずです。
これと同じで、ほかの応募者と同じようなことを書いてしまうと、それだけ勝つ確率が下がってしまうんです。
ちなみに、私は以前つとめていた出版社が主催するショートショートのコンテストの審査員をしたことがあり、応募作を1500通くらい読みましたが、そのうち6割くらいは「夢オチ」「ラストで主人公が自殺」「ラストで世界が滅亡」のどれかでした。
それらは全部落選です……。
ここで、誤解してほしくないのは、「王道」を避けるということではありません。それは別問題です。
こういったほかの人とかぶってしまうのを防ぐには、まずはたくさんアイデアを出して、たくさん書くこと。
そうやってアイデアを出し尽くした先に、その人だけのオリジナリティが見つかります。
なので、投稿者さんは、どんどん書いてみてください!
物語自体はすごくおもしろかったので、あとは数です!
期待しています!
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以上です。
ご覧になって、「小説予備校」に興味がわいた方がいましたら、こちらからぜひ!