今回は、いただいた質問に答えてみます。
「4000文字以内のショートショートを書いています。頭の中ではストーリーが想像できているのですが、それをうまく言葉にできません。4000文字の普通の文章なら3~4時間で書けるのに、1週間かかっても最後まで書き終わらず、いつまでたっても完成しません。アドバイスをいただけたら幸いです」
ありがとうございます。
こういう悩みを持っている人、結構多いのではないでしょうか。
「頭の中ではイメージができているのに、うまく書けず、ただただ時間ばかりが過ぎていってしまう」
これに対するアドバイスは一つです。
「頭の中に浮かんでいるイメージを、うまいとかへたは一切考えず、とにかく書いてみてください。その際、30分と時間を決めて、その間は小説を書くことのみに集中して、ネットはもちろん切りましょう」
これだけだと、おそらくほとんどの人が納得できないと思うので、少しくわしく説明しますね。
頭の中にイメージが浮かんでいるにもかかわらず、それを言葉にできない理由は、「うまく」書こうとしているからです。
最初の時点でうまく書く必要なんてありません。
一旦最後まで書き上げてから、修正を加えていけばいいんです。
まずはとにかくスピード、スピード、スピード、です。心掛けてください。
「小説って吟味に吟味を重ねた、洗練された表現で書くべきでは? プロの作家はみんなそんなふうに書いているのでは?」
こんなふうに思った人もいるはず。
でも、今の段階ではまだ、プロの作家と同じ書き方をするのは無理ですし、プロの作家を見習う必要なんてそもそもありません。それに、スピード重視で書きまくる作家もいますので!
なぜスピードにこだわるのかというと、たぶん質問者さんは、まだ小説をそんなに書きなれていないのではないでしょうか。
そのような段階でうまく書こうとすると、たいていの場合、それは「うまい表現」にはなりません。
それどころか、妙にこねくり回されていて、形容詞や比喩が過剰に使われているだけの、単なる「人が使わないような表現」になってしまうんです。
そんな表現は、ただただ読者に伝わりづらい。
たしかに、うまい表現や上手な言い回しに対する憧れってありますよね。私もすごくわかります。私自身も、そういうのに憧れていますし、「うまいねえ!」って言われたい欲がものすごくありますから。
でも、その憧れや欲求を満たすのは、もう少し書きなれてからでいい。
ゴテゴテに飾り立てられた表現よりも、シンプルで伝わりやすい表現を目指してください。
では、どうすれば、シンプルで伝わりやすい表現になるか。
その答えこそが、頭に思い浮かんだ言葉を、とにかくそのまま書くというもの。だからスピードが必要なんです。
とにかく、考えるよりも先に手を動かしてみましょう。
なぜなら、最初に頭に浮かんだ言葉とは、あなたが普段から使い慣れている言葉。
そんな表現が、相手に伝わりづらいはずがありません。
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では、「30分」と時間を決めるのはどうしてなのか。
人間の集中力なんて、そんなに長時間は持続しないからです。1時間だって、本当に集中し続けていられるとは思えません。
ちなみに、ここでいう「集中し続けている」とは、書きながらネットを開いて検索したり、スマホでラインをやったりする状態ではありません。
「やばい、あと5分しかない」という感じで、何かに追われるようにひたすらキーボードをタイプし続けるイメージです。
一回、時計で30分をはかって書いていただければわかると思いますが、このやり方は、むちゃくちゃ脳に負荷がかかります。脳が悲鳴を上げる感覚、とでもいいましょうか。
集中しているというのは、そういう状態のことを指すのです。
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ということで、質問者さんにやってほしいことは、うまいへたはさておき、ひとまず最後まで書き切ること。
そうして書きあがった原稿を、読み返してみてください。
きっと、想像していたほど悪い原稿ではないし、イメージしていたものがそこそこは描けていることに気づくはずです。
それに、仮にレベルが低くてひどい原稿だと思っても、大丈夫です。
それは誰かが見る原稿ではありません。誰も読まないのだから、すこしも恥ずかしいものではない。
誰かが見るのは、推敲を重ねて、あなたが自分自身にOKを出した原稿だけなんです。
それよりなにより、これまで多大な時間をかけても形にならなかった頭の中の小説が、まずは原稿という形になったことを喜びましょう!
小説家の第一歩は、どんなに短かい小説だろうと、最後の1行まで書き終えるところから始まるのです。
あと、最後の一つ。
そうやって書き終えた原稿を読み返して加筆修正するときも、やっぱり言葉に装飾をかけすぎてはいけません。
きっと、そうやって修正した原稿よりも、最初の原稿のほうが、読者に伝わる表現になっていると思いますよ。
ということで、書くのにすごく時間がかかってしまうという人は、参考にしてみてくださいね。
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