個性をつぶしかけた小説家のタマゴ
数年前、ぼくが某出版社で小説の編集者をしていたときの話をします。
ある文学賞の特別賞を受賞した小説家のタマゴの担当につきました。
会社からは、「短編をたくさん書いてもらって、もしもおもしろいのがそろったらデビューしてもらおう」と言われたので、その方には毎月3編の新作を書いてもらうことに。
受賞作はアイデアの切り口が良かったので、けっこう期待していたのですが、毎月送られてくる新作はイマイチ。
どれもフツーというか、この人の魅力が消えているというか。
一言でいえば、どこかで読んだことのあるような、ありきたりな小説ばかりでした。
「どうしちゃったんだろう?」と思い、直接会って、
「最近、作風変えたりしました?」と質問したところ、
「夢だった小説家デビューが見えてきたら、急に『売れなきゃ!』と思うようになって、どんなのが売れるのかを調べるようにしています」
との答え。
そうやって売れ線を調べた結果、サイトで人気がある作品や、売れている作品の二番煎じばかりを書くようになったのだとわかったのです。
つまり、自分の趣味嗜好は二の次にして、周りの趣味嗜好に合わせてしまったということ。
「このままだと、この人のいい部分がつぶれてしまうかもしれない……」
心配になったぼくは、ひとまず売れ線を調べるのをストップさせ、以前のように書いてもらうようにお願いしました。
なかなか苦戦したみたいですし、その直後にぼくがいた出版社がつぶれてしまったので、デビュー話は消えてしまいました。
それからしばらく年月が経ち、ぼくが書店で文庫コーナーを眺めていたところ、大手出版社の文庫アンソロジーの作者の一人に、この方の名前を発見!
その作品を読んでみたところ、良かった部分が表現されていたのでホッと一安心。
創作の第一歩は、「自分」がどう思うか
さて。
ぼくの思い出話をまとめると、
「自分よりも周りを優先することで、大切にしなければならないあなたの個性がなくなってしまう」
ということです。
小説家に限らず、新人クリエイターの創作の第一歩は、「自分がどう思うか」です。
「周りがどう思うか」ではありません。
ここを間違えると大変!
シャツを着るとき、最初のボタンをかけ違えてしまうと、最後までかけ違ったままでうまくいきませんよね。
それと同じです。
新人クリエイターのみなさんは絶対に、「自分がどう思うか」を最優先させてください。
そもそも、「イラストを描く」「小説を書く」「漫画を描く」「音楽を演奏する」「動画を作る」といったことは、誰かに命令されたのではなく、あなた自身が好きで選んだはず。
だったらとことん、自分自身の感性に従ってください。

どんなイラストを描こうかなあ……。世の中はこんなのが流行っているのか~。だったらこれと似たのを描けば、わたしも人気が出るかな
という考えになってしまってはダメ。
そこには、あなたがどう思っているのかがありません。
どんなものを作るのかも、やっぱり「自分」で決めなければならないんです。
そうでないと、最初に話した小説家のタマゴの人みたく、自分の個性がなくなって、ありきたりのものばかりを作るようになってしまいます。

そんなこと言ったって、自分の好き勝手に作ったところで、その作品を誰も見てくれないし、喜んでくれないんじゃん
こんなふうにマイナスに考えてしまうのもわかります。
流行に合わせて作って、それで人気を得ている人を目にして、「自分もあの人みたいになりたいな」と感じる時もあるでしょう。ぼくももちろん、同じように思うことがあります。
それでも新人クリエイターが、「自分がどう思うか」を最初に考えないといけない理由が3つあります。
- 「オリジナリティが作品に出てこない」
- 「楽しく創作できなくなってしまう」
- 「創作が続けられなくなってしまう」
この3つです。順番に説明します。
①オリジナリティが作品に出てこない
1つめにして最大の理由が、「オリジナリティが作品に出てこない」です。
オリジナリティとは、あなたの「個性」を表現したときに出てくるもの。
個性とは、「好き」や「興味がある」「なんかわからないけど惹かれる」など、あなたの「感性」の中に潜んでいます。
「世間の流行」や「周囲の意見」には、「好き」「興味がある」「わからないけど惹かれる」といったあなたの感性は含まれていませんよね。
世間や周囲の言われるがままに創作をしたところで、あなたの個性は発揮できず、ありきたりでつまらない作品しか作れなくなってしまうのです。
そんなの、もったいないじゃないですか。
ぼくも、そしてみんなも、あなたにしか出せない個性を活かした作品を待っているんです!
②楽しく創作できなくなってしまう
2つめは、「楽しく創作できなくなってしまう」です。
好きで創作をしているのに、周囲ばかりを見て、それに倣ってばかりいると、徐々に創作が楽しくなくなってしまうんです。
好きで始めた創作活動が、楽しくなくなってしまうなんて、怖くありませんか?

いや! 楽しさよりも人気がほしい! 人気が出れば楽しくなるはず!
という人もいるのであまり強くはいいませんが、そんな人は次を読んでみてください。
③創作が続けられなくなってしまう
3つめは、「創作が続けられなくなってしまう」です。
いくら人気が出ようとも、楽しくもなければ好きでもないことを続けられるほど、人間の心は強くありません。

最初は好きで始めた創作活動が、だんだん苦痛になってきて、もう3ヵ月も描いてません
実はこのような人も案外多いのです。
その理由の多くは、世の中や世間といった周囲を優先し、自分を優先しなくなってしまったことが原因でしょう。
周囲の意見ばかりを聞いて、「自分はどう思うのか」という心の声に耳を貸さなくなった結果、「やらされてる感」が強くなってきて、何をやってもつまらなくなってしまう。
こうなってしまうと、もうクリエイター活動を続けることができないかもしれません。
せっかく好きで創作を始めたのですから、自分の感性は大切にしてください。
以上、新人クリエイターが、「自分がどう思うか」を最初に考えないといけない理由を説明しました。
「楽しく創作活動を続けたい!」
「オリジナリティあふれる作品をつくりたい!」
とお考えの方は参考にしてみてください!
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