今回の記事は、「ある程度小説を書き慣れてきた人がハマりやすい【ワナ】」についてです。
これまでに何作かを完成させた人はもちろん、最近になって小説を書き始めた人も、
「こういうワナがあるのか~」
と考えつつ、頭の片隅に置いといていただければ幸いです。
少し前に、『名著から学ぶ創作入門』(フィルムアート社)という本を読み、そのなかにすごくいいフレーズが書かれていました。
「愛しきものを殺せ」
ちなみにこの本は、小説家はもちろん、ジャーナリストやライターといった、言葉を扱い言葉に悩む人に向けた文章術です。
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小説を書いていると、読者から、
「この一文、すごいね」
「うまい表現を書くよね」
「こんな比喩、私にはとても思いつかない!」
といった感想をもらうことがあるかもしれません。
最初はうれしいのですが、徐々にそうやって読者にホメてもらうことが目的になってくるのです。
もちろん、そういった気持ちが、「スキルをもっと向上させたい!」というモチベーションに繋がるので、けっして悪いことではありません。
でも、その先にはある「誘惑」が待っています。
それは、
「私はこんなうまいことが書けるんだよ」
と、自分の技術を見せつけたくなってしまうというもの。
いってみれば、ドヤ顔をしながら小説を書いてしまうんです。
小説を書けば書くほど、この誘惑は確実に強くなってきます。
いや、これは小説に限ったことではないでしょう。
スポーツでも、音楽でも、勉強でも、ビジネスでも、経験を積んで初心者の段階を脱すると、急に自分のワザを周囲に見てほしい、見せつけたいといった欲求がムクムクと湧いてくるもの。
きっとみなさん、経験あるはず。
その状態をうまく突破できるかが、その分野で大きな結果を残せるかどうかの分岐点になるといっても過言ではありません。
「それはわかったけど、じゃあどうやってその誘惑を断ち切ればいいんだよ?」
と思ったことでしょう。
そのときこそ、「愛しきものを殺せ」なんです。
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どういうことかを説明しますね。
繰り返しますが、経験を積み、努力して磨いた自分のスキルを大勢に知ってほしいというのは、ごくごく自然な欲求です。
なので、そういう文章を書いても全然問題ありませんし、むしろそうやって書いて発散させたほうがいいでしょう。
ただし、「最初の段階では」に限ります。
小説は、一度最後まで書き上げたらそれで終わり、ではありません。
むしろ、そこからの推敲作業によって、どれだけクオリティをアップさせることができるかが勝負。
そして、推敲時に必要なのは……客観的な視点。
ですので、推敲時に自分の原稿を読み直して、もしも、
「ここは、すごく力を入れて書いたし、我ながらうまい表現を書けたと思ったけど、なんだかここだけ浮いちゃってるな……」
という部分を見つけたら、そこはためらいなく削ってください。
つまり、「愛しきものを殺せ」とは、思い入れのある文章を捨てさるということ。
その表現を書けたときは、「私って天才!」とか思ったかもしれません。
小説家冥利に尽きるような一文を書けたのかもしれません。
でも、それは読者には関係ないことです。バッサリと削除しましょう。
もったいないと思うのはよくわかります。
「こんな表現、もう二度と出てこないかもしれないのに……」
なんて考えるかもしれません。
でも、大丈夫!
その表現がピッタリはまる小説を書ける日が、絶対にやってきます。
しかも、そんなに遠い日ではありません。
あなたはその小説を、「読者を喜ばせるため」に書いたはず。
だったら、「うまいと思われたい!」といったエゴは捨てましょう。
本当に読者を楽しませたいのなら、
「愛しきものを殺せ」
なのです。
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