今回は、自分の「好き」や「こだわり」の中に、小説にすべきテーマが詰まっていますよ、という内容です。
小説を書いていくうえで、アマもプロも関係なく多くの人がぶち当たる最初の難関があります。
それは「どんなテーマで小説を書くか」です。
言葉を変えると、「あなたが書きたいテーマは、いったい何なのか」といっていいでしょう。
文章を書くことに慣れてくればくるほど、テーマ選びが重要になってきます。
あの『ひょっこりひょうたん島』の著者で、直木賞、読売文学賞、日本SF大賞、谷崎潤一郎賞など、数多くの受賞歴のある作家・井上ひさし氏は、
「作文の秘訣は、自分にしか書けないことを誰にでもわかるように書くこと」
だといっていました。
この「自分にしか書けないこと」が、小説にしたいテーマなのです。
考えてほしいのは、
「私が小説にしてまで書き残したいことは、いったいなんなんだろうか?」
ということ。
改めて質問されるとドキッとするかもしれませんし、なかなか出てこないかもしれません。
そんな人のためにここから、「テーマ探しで気を付けること」を3つ、解説します。
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まず1つめは、「当たり前すぎることはテーマにならない」です。
なぜなら、当たり前すぎると平凡になってしまい、おもしろくならないから。
たとえば、「人を殺してはいけない」「困った人を助けよう」なんて、当たり前ですし、ほとんどの人は「まあ、そうだよね」と納得するでしょう。
これを小説のテーマにしたところで、盛り上がりに欠けるストーリーになるでしょうし、読者の心を撃つことも難しいと思います。
そうではなくて、「人を殺してはいけないのは分かるけど、殺さざるを得ない場面だってある」というテーマだと、いかがでしょうか?
「ん? どういうことなんだ?」と、引っかかったのではありませんか?
ちなみに、作家の東野圭吾さんの映画化された『容疑者Xの献身』は、テーマにこの要素が含まれていると私は思っています。
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つづいて「テーマ探しで気を付けること」の2つめは、「大勢と同じである必要はない」です。
今って、「出る杭は打たれる」といわんばかりに、みんなが一直線に並んで、同じようなことをしてしまう時代です。
ちょっと抽象的ですが、
「あ、私だけこっちで、みんなはそっちに行くのか~。なら私もそっちに行こう」
といつも周りを見たりして、自分の意見を表明することを避けがち。
小説に関しては、この行動はマイナス。
大勢と同じテーマを書く=読まれない、になってしまうのです。
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3つめは、「テーマにあなたの好きや、こだわりを反映させているか?」です。
上の2つを読んで、
「よし、大勢と違うこと、当たり前ではないことをテーマにすればいいんだな!」
と思った人もいるかもしれません。
でも、いくら独特で他の人が書かなそうなテーマであっても、そこにあなた自身の好きやこだわりが入っていなければ、それではやっぱりダメなんです。
なぜなら、好きやこだわりというのは、あなただけのもの。
ほかの人と比べられない個性であり、それこそがオリジナリティなんです。
なので、他の人と違うテーマを決める時は、好きやこだわりが反映されていること、つまり、あなたの「書きたいこと」であることが大前提。
それに、好きもこだわりもない小説なんて、書いていても全然楽しくなりません。
ここは忘れがちなので、気を付けてください。
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以前、ある文学賞の特別賞を受賞した人を担当したことがあります。
その人は、小説家になりたくて、小説を書く勉強をたくさんしていて、いくつもの短編やショートショートを完成させていました。
でも、どの作品も、どこかありきたりで平凡でした。
その人は、
「自分の好きなことなんて、他の人には理解できないだろうし、全然おもしろいと思ってくれないと思う。それより、みんながおもしろいと思うものを書いている」
と言って、大勢が否定しないであろうことばかりを小説にしていました。
なので、「もっとあなたの好きやこだわりを前面に出して、書きたいことを書いてください」と伝え、テーマ探しに時間を費やしてもらいました。
最初は戸惑っていましたが、徐々にその人のこだわりが見える作品ができてきて、少なくともそれまでとは違った魅力的な小説が書けるようになっていったのです。
少し前に、大手出版社の文庫アンソロジーにその人の作品が収録されているのを見かけました。
さて。
今回は、あなた自身の好きやこだわりを突き詰めて、小説のテーマにしてみましょう、ということについて書きました。
まずは、自分の好きやこだわりを、誰にも見られないノートなどに書きだしてみてはいかがでしょうか。
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